【完全保存】従業員を雇い入れたときの手続き

 

 

従業員を雇い入れたときの手続きに関するおおまかな流れは、次のとおりです。

 

  • 採用決定:社会保険および労働保険(主に雇用保険)の加入要件に該当するかの確認をする
  • 入社日決定:入社日に書類がそろうように準備する
  • 入社日:従業員に書類を提出してもらう
  • 入社から5日以内:社会保険の加入手続き(および被扶養者の手続き)を行う
  • 入社月の翌月10日まで:雇用保険の資格取得手続きを行う

 

これから、①~⑤の流れの詳細を説明していきます。

 

 

採用決定

 

従業員の採用が決まったら、その従業員が社会保険および労働保険の加入対象になるかどうかを確認しておく必要があります。加入対象になる場合、各種の手続きをしなければなりません。

 

では、社会保険および労働保険の加入対象の要件を見ていきましょう。

 

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象

正社員は無条件で社会保険の加入対象となります。

正社員以外の従業員(パートタイマー・契約社員・アルバイトなど)は、週の所定労働時間と所定労働日数の両方が正社員の4分の3以上(以下、4分の3要件とする)であるときに加入対象になります。

たとえば、正社員の週の所定労働時間が40時間、所定労働日数が5日の会社における「4分の3要件」は週の所定労働時間が30時間以上かつ所定労働日数が3.75日以上となります。そのため、新たに採用されたパートタイマーの週の所定労働時間が32時間、所定労働日数が4日の場合は社会保険の加入対象となり、週の所定労働時間が28時間、所定労働日数が4日の場合は社会保険の加入対象となりません。

また、4分の3要件を満たさなかった者でも、会社の規模(従業員数501人以上)や労使合意のある会社では、次の条件を満たす者は加入対象となります。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 給与が月88,000円以上
  • 雇用契約期間が1年以上見込まれる
  • 昼間学生ではない
井上とまと

社会保険の加入対象となった従業員は、原則として必ず社会保険に加入しなければなりません。会社や従業員の希望や都合で加入するかどうかを選べるわけではありません。

 

労働保険(労災保険)の加入対象

原則、すべての従業員が加入対象となります。また、労災保険は事業所単位で加入するため、従業員を雇い入れたときに個別に手続きすることはありません。

 

労働保険(雇用保険)の加入対象

次の条件を満たす従業員が加入対象となります。

  • 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上
  • 31位日以上の雇用の見込がある

ただし、学業が主となる者や会社の役員は加入対象となりません。

 

入社日決定

 

入社日が決定したら、従業員に以下の書類を用意または作成してもらうように伝えます。

 

従業員に用意してもらう書類

  • 雇用保険被保険者証
  • 年金手帳
  • マイナンバー(マイナンバーカードまたはマイナンバー通知書)
  • 源泉徴収票
  • 健康診断書(3か月以内に健康診断を行っている場合)

 

会社から従業員に渡して書いてもらう書類

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 雇用契約書
  • 給与振込先届出書
  • 各種手当支給届出書
  • 雇用保険被保険者証
井上とまと

採用した従業員が初めて(雇用保険の適用事業所に)雇用される場合は、その従業員は雇用保険被保険者証を持っていないため、用意することはできません。

 

年金手帳

採用した従業員が国民年金の被保険者でない場合(満20歳未満)または初めて(社会保険の適用事業所に)雇用される場合は、その従業員は年金手帳を持っていないため、用意することはできません。

 

マイナンバー

マイナンバーカードもしくはマイナンバー通知書はすべての国民が取得・交付しているものです。今後、マイナンバーに健康保険証や一部の免許情報が付帯される予定のため、入社時に可能な限りマイナンバーカードを取得するように促した方がいいかもしれません。

 

源泉徴収票

入社前に収入があった場合は源泉徴収票が必要になります。逆に、入社前に収入がなかった場合は当然ことながら必要ありません。

 

健康診断書

3か月以内に健康診断を行っている場合は健康診断書を提出してもらいます。これにより、入社時の健康診断を省くことができます。

 

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

従業員に扶養者がいてもいなくても記入してもらいます。

 

雇用契約書

従業員が労務を提供する代わりに、会社が賃金を支払う契約が雇用契約です。文書に収める義務はありませんが、トラブルを避けるため、文書を取り交わしておいた方がいいでしょう。文書に収める義務のある労働条件通知書(具体的な労働条件を記したもの)と合わせて作成し、従業員の同意を得ます。

 

給与振込先届出書・各種手当支給届出書

いずれも給与に関する届出書になります。給与を振り込む金融機関の情報や、手当の支給の可否や支給額を決定するための情報を記入してもらいます。

 

入社日

 

入社日(=社会保険および労働保険の加入日)から5日以内に社会保険(健康保険および厚生年金保険)の加入手続きを行わなくてはなりません。そのため、遅くても入社日には、従業員に必要書類を提出してもらわなくてはなりません。

必要書類に不備などがある場合もあるため、できるだけ入社日前に必要書類を提出してもらった方がいいでしょう。

 

入社から5日以内

 

社会保険(健康保険および厚生年金保険)の加入手続きは、入社日(=社会保険の加入日)から5日以内に行わなければなりません。

 

加入手続きには、次の2つのパターンがあります。

  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している会社の場合は、管轄する年金事務所で健康保険と厚生年金保険の加入手続きを行います。
  • 健康保険組合に加入している会社の場合は、健康保険の加入手続きは健康保険組合で、厚生年金保険の加入手続きは年金事務所で行います。

 

社会保険(健康保険および厚生年金保険)の加入手続きに必要な書類は以下の2つです。

「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 / 厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」

「健康保険 被扶養者(異動)届 / 国民年金第3号被保険者関係届」

このうち、「健康保険 被扶養者(異動)届」は、被扶養者(扶養する家族)がいる場合に届出義務があり、「国民年金第3号被保険者関係届」は、第3号被保険者(20歳以上60歳未満の被扶養配偶者)がいる場合に提出義務があります。

被扶養者および被扶養配偶者の条件は、「健康保険 被扶養者(異動)届 / 国民年金第3号被保険者関係届」の記事で詳しく説明しています。

 

「健康保険 被扶養者(異動)届 / 国民年金第3号被保険者関係届」を提出するときは、次のような被扶養者などの続柄や収入を証明する書類を添付しなければなりません。

すべての被扶養者戸籍謄本・戸籍抄本または住民票の写し
退職した被扶養者雇用保険被保険者離職票の写し
失業給付を受給中または受給し終えた被扶養者雇用保険受給資格者証の写し
年金を受給中の被扶養者年金額の改定通知書などの写し
自営・不動産収入などがある被扶養者直近の確定申告書の写し
井上とまと

別居の被扶養者がいる場合や内縁関係にある被扶養者がいる場合は、仕送りの事実を証明する書類や内縁関係を証明する書類が必要になります。状況によって関係や収入を証明し得る書類が異なりますので、特殊な扶養関係にある場合は、年金事務所や日本年金機構などに確認しておいた方がいいでしょう。

 

入社の翌月10日まで

 

雇用保険の加入手続きは、入社日(=雇用保険の加入日)の属する月の翌月10日までに行わなければなりません。管轄する公共職業安定所(ハローワーク)で加入手続きを行います。

雇用保険の加入手続きに必要な書類は、「雇用保険被保険者資格取得届」です。

 

雇用保険被保険者資格取得届を提出するときには、以下の書類が必要になります。

  • 雇用契約書(雇用期間を確認できるもの)
  • 賃金台帳・労働者名簿
  • 出勤簿(タイムカード)
  • 社会保険の資格取得に関する書類   など

 

以上で、従業員を雇い入れたときの手続きに関するおおまかな流れの説明が終わりました。

 

従業員を雇い入れたときは、期限の決められたいくつかの手続き義務が生じます。従業員を1人雇い入れた程度なら、そう難しくないかもしれませんが、複数人同時に雇い入れたときは事務処理が煩雑になります。

そのため、手続きや必要書類に漏れがないようにチェックリストなどを用いて確認すると安心です。

 

社会保険や労働保険の加入手続きは、それぞれ書類の提出期限が設けられていますが、期限を過ぎたからといって、書類を受け付けてもらえなくなったり、加入できなくなったりすることはありません。ただし、手続きが大幅に遅れたり、故意に手続きを行わなかった場合には、ペナルティが発生しますので、できるだけ早く手続きを済ませましょう。

 

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